第65話 / 全71話

第65話

夜更けまで上奏文に目を通していたら、気づけばもう丑三つ時だった。こめかみを揉みながら寝殿へ戻る途中、御花園を通りかかったその時――突然、後ろから口を塞がれた。反射的に肘を打ち込む。だが、その一撃はあっさり受け流された。ふわりと鼻先をかすめたのは、どこか懐かしい薬草の香りと、龍涎香。

「……私だ。」