第2話 / 全10話
第2話
それから三日、私は計画的に「呪いをローテ」した。
月曜:技術部全員に偏頭痛(2000ポイント/5人)。午前中にコードが八バージョン崩れた。 火曜:経理部の集団不眠(3000ポイント/7人)。その日、三件の帳が合わず、黒田徳治は午前中ずっと怒鳴っていた。 水曜:受付のミサキが「うっかり」営業部長の新スーツにコーヒーをこぼし、部長はその場で飛び跳ねた——これは私の呪いではない。ミサキが手が震えただけだ。だがアプリは「周辺の苦痛を関連づけ済み」と表示し、150ポイントを足した。
スレには毎日「戦報」を上げた。実名は出さない。「今日某部署が偏頭痛セットをゲット」「コーヒーの零し方が芸術的だったらしい」とだけ書く。
レスは「ははは」から「おいマジみがある」へ、それから「スレ主、超能力者か」へ変わった。
高評価のレスが一つあった。
「真偽はどうでもいい。このスレを読んで、今日の出社に力が入った。敵も、痛がるんだと知ったから。」
それを見て、画面の前で数秒止まった。
それからいいねを押した。
木曜の夜、初めての「助けて」DMが来た。
差出人は卒業したての女の子だ。某ITで上司に半年パワハラされ、毎日泣いている。辞められない、住宅ローンがある。「私の上司も呪ってもらえますか」と。
無視するつもりだった。指が画面の上で、長いあいだ止まった。
結局、三文字返した。
「名前。」
名前と会社が送られてきた。
アプリを開き、「偏頭痛」にその名前を入れる——200ポイント。
一言足した。「泣くな。奴は今夜、三時まで頭が割れ続ける。」
翌朝、返信。「本当です! 今日休みました! ありがとう!!!」
その感嘆符を見て、ふと気づいた。手元のこのシステムは、もう私一人の武器ではない。
コメント欄は「続き待て」から「スレ主、お願いします」へ変わり、スレを「ネットの願い事」として転送する奴まで出た。転送のたびに「元会社倒産祈願」がつく。
その夜、ポイントは200万を超えた。
大成テック十階の会議室で、黒田徳治は卓を叩いて怒鳴っていた。「最近どうなってんだ。次々休み! 俺に逆らってるのか?」
誰も答えられない。
奴は知らない。罵る一言一言が、私のポイントを増やしている。怒りがひどいほど、私は速く増える。
私はアパートで、カップ麺も茹で終わる前に、通知を受け取った。
「おめでとうございます。累計・職場危害事件:12件。システム評価:試用期間合格。」 「新機能解放:呪い範囲を管理層まで拡大。」 「アップグレード警告:『管理層の呪い』を一回使うたび、宿主の現在総ポイントの5%を『高次手数料』として消費します。」
5%?
やっと200万を超えた数字を見て計算する——管理層の呪いは一回10万ポイント。
だが、黒田の横の副社長を三日寝かせられるなら。元は取れるか。
「副社長・岡田健吾 偏頭痛+痛風コンボ(管理層専用)」を見つめる。価格:12万ポイント。
窓の外、あの灰白色のビルの最上階は、まだ灯っている。
指を伸ばし、画面を軽く滑らせた。
「確認。」
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