第2話 / 全12話

第2話

状況を言う。

私と葛城朔は、どちらも財閥の跡取りだ。両家の親は強者同士を繋ぎたくて、ずっと私たちをくっつけようとしてきた。

会えば喧嘩。二十年、一日も欠かさない。

縁談の年になって、親が腹を括り、一年の「同棲お試し」を押し付けた。

気に入れば縁組。

気に入らなければ、そこで終わり。

体が入れ替わった経緯は——

同棲三百五十九日目、また揉めた。物を投げ、葛城家伝来だという瑠璃のランプが床で砕け、同時に何かが当たって、目の前が落ちた。

目が覚めたら、いまの状態だった。

一年期限まで、あと七日。

最後の一押しを足して、この縁組を完全に潰すつもりだ。

葛城グループ本社、朝九時。

重い歩幅で執務室へ入る。スーツの上から二粒を外し、厚い鎖骨を出し、口角だけ上げて、不良じみている。

役員が、その場で固まった。

いつもの葛城朔:一番上まで留め、冷血、近寄せない。

今日の「社長」:別人だ。

エレベーターで、総務の新人インターンのために扉を押さえた。

擦れ違いざま、少し顎を下げ、低い男声で笑って言う。

「ご苦労。」

子の顔が、一瞬で朱に染まる。

心の中で一筆記す。

葛城、普段あの顔でどれだけ資本を無駄にしてるか、知ってるか。

昼十二時、社員食堂。

食堂の中央に立ち、手を叩いて場を静める。

「今日は三月八日、国際女性デーだ。」

葛城の低い声で、急がない。

「うちの規定で、国際女性デーは女性社員、午後休み。」

場が一拍遅れ、それから爆発する。

手を上げて押さえ、口角を不良じみに曲げる。

「ただし休む前に、社長として——諸君に、一曲、捧げる。」

瞬間、死んだように静かになる。

互いの顔を見合い、聞き間違いかと疑っている。

振り返り、財務と法務の老人たちに顎をしゃくる。

視線を交わして、仕方なく立ち上がる。

DJに小さく頷いた。

ダサいジャズが、定刻どおり炸裂する。

ネクタイを引き、ジャケットを脱いだ。

シャツが張り、普段仕込んだ腹筋の輪郭が薄く浮かぶ。

吸い込む音の中で、大理石の床に陣を敷く。

片手をポケット。跨ぎ、足を払う。

一八七の長脚が、ドラムに合わせて振り切れる。

馬鹿げている。

だが底が良すぎて、ホルモンが弾ける芸術に見えてしまう。

「社長! もう一本! 脚、反則!」

女性社員は飯も忘れ、喉だけ動かしている。

悲鳴が天井を剥がしそうだ。

心の中で笑う。葛城、見てろ。明日この動画は街中を回る。縁談、解消しろ。